//
本調査事業から導かれた効果、今後の提案

マキビトの活動イメージ

マキビトには、果樹園等を営み毎年の剪定枝等を薪ストーブに使う者が4割おり、自家生産・消費をしていく見込がある。しかし残る6割は、薪の入手を近所や親類など外部に頼っており、そのうち4割はいずれ薪に不足が生じると危惧している。薪の確保には仲間づくりが必要との認識がある。

薪ストーブ利用者を集めて組織化する切り口(アプローチ)は、今後「林地残材を活用した小さな経済の仕組みづくり」の進展において、残材の活用の点で期待ができる。ただし、「時間の確保」「広葉樹を好む」などの現実課題には何か対策が必要であり、活動基盤の安定化が望まれる。

薪割り体験は、教育的・体験的な場として有望なアクティビティである。今後、人的体制が整い、かつ相応の収益が見込めるならば、活動として成り立つと見込まれる。

材を提供する森林所有者が山や木質バイオマスエネルギーの話をすることは、森林に対する想いが薪の利用者に「伝わる」ため、特に子供への教育的意義は大きい。将来に向けて、山に関わり森林を担う人々を発掘し育成するきっかけとなる。

  1. マキビト ・・・・・・・・・活動情報の発信、技術交流、森林所有者に働きかけ、森林整備の促進。
  2. 住民/森林所有者・・・・・  地域の森林や木材の利用、薪割りや玉切り体験を啓発、薪ストーブ導入や森林活動への働きかけ、
  3. 都市住民/ボランティア・・・森林の役割、山村の役割、地域文化の情報を提供する相手方。薪割り体験を体験教育旅行のメニューにして誘客。ホームページで、いつでもどこでも薪に関する情報が得られる

薪人を中心とした活動イメージ

小さな経済のしくみづくり  ~「得を感じる」しくみ ~

多数のマキビトは、本事業が先進的で社会的な貢献につながると認識している。しかし、林地残材を活用して居住地域や地球環境への貢献のためだけに「汗を流す」ことは魅力に欠け継続しない。「お得感」を組み込んでこそ、「小さな経済」が動き出すものと推定する。マキビトの感想は下記のとおり。

  • 薪がもらえて嬉しい
  • 森がきれいになった
  • 技術習得ができた充実感
  • 作業ができた達成感。作業後の気持ち良さ。(ストレス解消、ダイエット効果など)
  • 地域貢献(マキビト活動が地域や環境の一助となり得る)
  • 化石燃料の代替エネルギーを作れた

軽量架線の材搬出キットを駆使することで搬出経費を削減できても、薪の販売収入だけでは採算がとれない。補助金、交付金、森林税、または地域通貨を活用する工夫も必要である。

先進的な事例には次の仕組みがあり、参考としたい。

  1. 材の買取価格に地域通貨が付加されたことで、林地残材が「宝」となった。
  2. 自伐林家による間伐材(林地残材)の搬出が増加し、結果的に森がきれいになった。
  3. 地域通貨の流通により地元商店街などの経済が活性化した。
  4. カーボンニュートラルである木質バイオマスエネルギーにより、温暖化対策に寄与し自給自足につながる。

マキビト事業において「小さな経済」を動かそうとするならば、「得した」と感じる気持ちを増やすことが肝要である。

マキビトの組織化

マキビト事業は、土佐の森・救援隊や矢作川水系ボランティア協議会、夕立山森林塾、鳥取県智頭町などの成功事例をヒントにして、飯田市なら「薪」をキーワードにした取り組みが可能ではないかとの推測から生まれた。薪ストーブ利用者を集め「同志」とすることで、お互いに情報を寄せ合う仲間に発展し、山と里をつなぐ組織に育っていったことは、本事業の最大の成果である。

そこで、薪に関する情報ステーション(ホームページおよび事務局)を立ち上げ、マキビトがもつ環境や薪に対する「想い」を結集して、今ここに「(仮称)薪人」を結成したい。薪人が、薪の関するセミプロ集団として、困っている林地残材の搬出や、環境活動を担える実行部隊となれば、第二第三のマキビト事業へと発展する可能性がある。

飯田市内には財産区や生産森林組合が所有する「市民の森」が各所にあり、それぞれは地域住民が手入れする里山保全的な森林活動もあり、間伐や搬出などの手入れは必要となっている。

「環境モデル都市」飯田市の具現化を進める中で、薪人と地域住民が連携するようになれば、「絆」や「協働の輪(和)」が広がり、各地域で森林にまつわるコミュニティの再構築や、生活やエネルギーの「自立」が促進されてくる。

薪というツールは個人的な価値の範囲にすぎないが、震災後のライフスタイルを見直す中で、一つの切り口として一般社会に普及していけば、地域森林資源による循環型社会の形成と、経済の好循環、または温室効果ガスの吸収源対策が進展するであろう。

薪に関わる人々、「薪人」

この新たな組織が、環境教育や世代交流・次世代育成という要素を絡めながら、住民と森林との距離を近づけ、森近感(しんきんかん)を育み、暮らしの中に木質バイオマスが循環する小さな経済の仕組みづくりを行う「原動力」となることを期待したい。

マキビト組織化ビジョン

QR Code Business Card